遺言について(7) ~遺言の執行が不可能な場合(2)~

今回も、遺言を執行するにあたってのトラブルの事例紹介です。
最近、実際に起こったことで、改めて注意しなければと思いました。
何かと言いますと“火災保険”です。

貸家を賃貸されている場合や自宅など、火災はもちろんのこと地震等の災害に関する特約も付いた建物や家財の損害保険に加入するのはほぼ常識となっております。
(住宅ローンは必ずセットになっているでしょうし、所有者責任の軽減の為にも損害保険の加入は入るべきでしょう)
では、この損害保険の契約者が亡くなった時のトラブルについてご紹介します。

相続が発生し、相続人が調査した結果、公正証書遺言が作成されており、内容は次のようなものでした。
①不動産と預貯金については、相続人A,相続人B,相続人Xへ均等に遺贈する。
②その他の財産(債務を含む)については、相続人Aへ包括して遺贈する。
③受遺者が相続人の場合には、「遺贈する」を『相続させる』と読み替える。
その他は遺言執行者の指定とその報酬についてです。

一見、漏れがなさそうな遺言です。
では、被相続人が契約者である損害保険は、この遺言ではどのように承継されるでしょうか。
答えは、遺言書の記載漏れで手続きが出来ない場合が多いです。
保険契約を財産とみなすことは難しく②には該当せず、約款等から保険会社の個々の判断となるでしょうが、スムーズにはいかないでしょう。
事実、今回のケースでは公正証書遺言では手続き不能と判断されました。

相続人で遺産分割協議を行って契約の承継者を決めなければなりませんが、その協議には受遺者Xは当然参加できません。
もし、相続人がAさんとBさん以外にいれば、不動産を相続しないのに契約者の承継に関わってくるという矛盾がでてきます。
長期前払い保険や、高額な積立が有る場合、解約しその返戻金の分配を行うことになる可能性が高いと思われます。
そうすると、一から損害保険に加入する必要があり、あらゆる意味で無駄な手間が増えることとなります。

遺言書を作成するお手伝いの際には、ヒアリング漏れがないように気をつけようと改めて思い知らされた案件でした。

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遺言について(7) ~遺言の執行が不可能な場合(1)~

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