相続放棄を行うための期間について(続き)

相続放棄を行うための期間について の続きです。
今回は、相続放棄の期間の延長が認められなかったケースについて検討します。

東京地裁平成22年3月の判決は、一旦受理された相続放棄が無効とされたものです。
被相続人は、妻と長女(先死亡)の夫を連帯債務者として信用金庫から借り入れを行っており、被相続人の孫(長女の長女で代襲相続人)が3カ月を超えて相続放棄を行った事件です。
平成7年8月に被相続人が経営する会社が、本人とその妻と長女の夫を連帯債務者として資金調達。
平成13年8月に相続発生 → その後被相続人の妻が自宅を売却し、長女の夫と孫と共に借家へ転居。 家業は継続。
平成14年4月に孫が婚姻により転居(近隣に居住)
平成20年3月に会社の資金繰りが行き詰まり、その翌月には連帯債務者の妻や長女の夫からも返済が行われなくなった。
平成20年12月に、孫のところに返済を求める内容証明郵便が送達された。
平成21年2月に、孫は相続放棄の申述受理の申立てを行い、その12日後に申述の受理が行われた。
その受理を不服として、債権者である信用金庫が裁判を行い、結果として3カ月を超えて行われた孫の相続放棄が無効となったものです。

おそらく、連帯債務者が相続されることは知らなかったとか、事業には一切関与していなかったとか、色々と上申書へ記入し申し立てを行ったと思われます。
以前にも申しました通り、明確な理由があれば熟慮期間の延長を認める傾向にあるようなので一旦は認めたのでしょうか、もちろん債権者も黙ってはいません。
自宅を売却され祖母や父と借家へ転居した状況や、実父が事業を行って借入の返済を行っていたことや、近所に居住していたことなどから、『状況を認識することが著しく困難な状況であったとは認めがたい』とされ、熟慮期間経過に成された相続放棄の申述として無効とされました。
ほぼ債権者の主張が認められた判決のようです。

つまり、相続放棄の熟慮期間が延長されて申述受理された場合、その効果は相続開始まで遡及しますが、債権者からの訴え次第ではその延長が認められず、申述が無効となってしまう可能性もあるということを認識しておく必要があるということです。
なので、相続放棄は延長できると安心を“しない”方が身のためです。

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