不動産の賃貸借(4) ~敷引き特約の続き~

今回は、敷引き特約の有効性が認められた場合についてみてみたいと思います。

そもそも、敷引き特約の有効性について疑義が生じたきっかけは、平成13年4月に施行された『消費者契約法』が大きいのではないでしょうか。

消費者契約法
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

この法律が施行される以前においては、“当然に”無効という判例や学説は見受けられませんでした。
施行後は、無条件の敷引きは消費者にとってあまりにも不利な規定として、この特約について争われるようになりました。

そこで重要になってくる判決は、平成23年3月24日と同年7月12日の最高裁判決です。
・賃借人(事業者ではなく消費者)は、特約のない限り、通常損耗等についての原状回復義務を負わない。
・敷引き特約は、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含む。
・敷引き特約そのものが、民法第1条第二項(信義則)に反して、賃借人の利益を一方的に害するものと直ちにいうことはできない。
・但し、敷引き額が高額に過ぎると評価されるものは、特段の事情のない限り、消費者契約法第10条により無効となる。

かなり端折って書きましたが、結論は敷引きの金額が月額賃料の2倍弱ないし3.5倍程度の事案であれば、高額に過ぎるとは言えず、敷引き特約は有効とされました。

さらに言うと、『特段の事情』があれば、高額の敷引きも有効であると読めます。
この特段の事情が非常に難しい所で、「同種の建物の賃料相場に比して大幅に定額であるなど」と例示はされておりますが、トラブルを防ぐためには、月額賃料の3倍を限度にする方が良いのではないでしょうか。
また、改正民法が施行されるタイミングで新たな判例が出てくる可能性も否定できませんので、いっそのこと敷金を“なし”とするケースが増えてきているのでしょう。

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不動産の賃貸借(3) ~敷引き特約は無効?~