不動産の賃貸借(19) ~賃借人に不利な特約が記載された契約は常に有効?~

今回は、賃貸借契約書に賃借人にとって“不利な”契約、つまり賃貸人にとって有利な契約の有効性について確認しましょう。

まず、居住用の賃貸借契約であることが大前提です。
あと、当然のことから「借地借家法」という特別法と異なる合意があっても「借主に不利な特約として無効」となるものがあります。
(例えば、賃料の支払いが1日遅れたら退去と書かれていても当然のごとく無効)
次に、消費者(借家人)の利益を一方的に害するものは、消費者契約法により無効とされるものもあります。
(過剰な敷引きなど)
この2法律は強行規定としてある意味“君臨”している状況です。

しかし、上野強行規定に反しない限りにおいて、賃借人にとって不利な特約(賃貸人にとって有利な特約)を契約書に反映させたとしても、かならずしも無効とななりません。
なぜなら、『契約自由の原則』があるからです。
賃借人と賃貸人双方が納得の上同意していれば有効とされるものもあります。
よくあるのが“原状回復”についてです。

但し、“納得”の証明が難しいのです。
本当にその特約についての内容を理解し契約内容に反映させることについて同意していたのか、トラブルになるのは契約締結時ではなく退去時(つまり事後)の為、過去の状況の証明が非常に厄介です。

そこで、最高裁判決も踏まえ、実務において次の3要件を満たしておく(証明する準備をしておく)ことが重要となりました。
①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的・合理的理由が存在すること。
(近隣の相場より賃料が安く、賃料だけでは原状回復費用の改修ができない等)
②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。
③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。

②と③について、賃貸借契約書への記載と署名押印だけでは満たされないようです。
また、過去の判例において、重要事項説明書への記載(賃借人の署名押印入り)でも不十分とされたものもあります。
賃貸借契約書と重要事項説明書以外に、その特約専用の“確認書”もしくは“同意書”の準備も必要だと思います。

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